三美地区
中山間地域における高収益作物の導入と地域活性化
整備前
未整備農地による小規模経営
未整備農地の小規模営農であり,生産効率が低い状況であったため,担い手への農地集積が進んでいなかった。また,担い手不足による耕作放棄地拡大への不安があった。
基盤整備
区画整理や畑地かんがい施設の整備 による大規模経営
農地集積による大規模経営
新たに整備された農道や排水路
●区画整理や畑地かんがい施設を整備することにより,生産環境が大幅に向上し,経営規模の拡大や機械の導入が可能となった。さらに,担い手への農地集積が進んだことにより,耕作放棄地拡大の防止,担い手不足の解消にも貢献。
生産現場
畑地かんがい施設整備による高収益作物の導入
●畑地かんがい施設を整備することにより,ネギやナスといった収益性の高い作物に転換。
●安定した収穫量の確保や収穫期の長期化を図るため,露地栽培のほか,ハウス栽培も行っている。
地域の取組
中山間地域の活性化
若手農業者が行うネギ出荷作業
●地域農業の振興や新規就農者の確保及び育成の受け皿として,JA出資法人を地域の担い手とし迎え入れた。
●JA出資法人は,若手農業者の育成に積極的に取り組み,就農相談会へ参加するとともに,新規就農希望者や研修生の受け入れを行っている。
担い手
農地中間管理機構を活用した農地集積
●農地中間管理機構を活用した農地集積を進め,地区内農地の約78%を担い手へ集積した。
流通
農産物のJA・直売所での販売
若手農業者が行うネギ出荷作業
●本地域の特産品である「奥久慈ねぎ」,「奥久慈なす」は市認証特産品に指定されており,農協を通じ京浜市場に出荷され,高い評価を得ている。
●直売向けレタスは,地元道の駅で販売され,目玉商品となっている。
高収益作物の導入による農産物販売額の増加と 若手農業者の受け入れに伴う中山間地域の活性化
●基盤整備を契機に,地区外からJA出資法人が担い手として参入。地区内での経営面積を年々拡大させることにより,生産コストの低減を図るとともに,畑地かんがい施設活用による高収益作物を導入し,地区内農地における農産物販売額を約3.2倍に増加させている。
●JA出資法人は,若手農業者の育成に積極的に取り組み,平成27年より研修生の受け入れを行っている。
【出典:法人からの聞き取り】
【出典:畑かん実証圃調査結果より】
【出典:法人からの聞き取り】
カンショの収穫状況
工夫のポイント
●国営那珂川沿岸農業用水を活用した畑地かんがい施設の整備により,高収益作物を導入。
●基盤整備を契機に,地区外から新たにJA出資法人を担い手として迎え入れ,中間管理機構を活用した農地集積を推進。
●JA出資法人において新規就農希望者や研修生を積極的に受け入れることにより,地域農業の振興や中山間地域の活性化を図っている。
●位置:茨城県常陸大宮市 ●主要作物:ネギ ナス カンショ キャベツ レタス ●主な支援施策 畑地帯総合整備事業(H20~H32) 国営かんがい排水事業(H4~) 県営かんがい排水事業(H7~)
上小岩戸地区
事業を契機とした高収益作物への転換と農地集積
整備前
山林が混在し,区画も不整形な農地
区画が狭小かつ不整形で農道も狭く,排水不良に悩まされ,営農する上で不利な地区だった。また,山林が混在し耕作放棄地も年々増加していた。
基盤整備
区画整理による作業効率の向上と高収益作物への転換
整備された区画及び生産基盤
事業で整備したウォータースタンド
●区画整理により,区画が整形され,排水路と農道が整備されたことにより事業実施前と比べて作業効率が向上した。また,用水施設を整備したことにより,用水を必要とする作物の作付が可能になった。
生産現場
新たな高収益作物の導入畑地かんがい施設整備による高収益作物の導入
ニラの作付
●以前から作付が行われていた馬鈴薯,甘藷,ニンジンだけでなく,里芋,ニラなどの新たな高収益作物の導入がすすんだ。 畑地かんがい施設を整備することにより,ネギやナスといった収益性の高い作物に転換。
加工・流通
6次産業化・ブランド化
甘藷の加工・直販
●地区で栽培された甘藷は,農家自身の手で干しイモや焼きイモとして加工・販売まで手掛けている。ニラは,茨城県の銘柄産地指定を受け,「美野里緑王」とブランドニラとして市場に流通している。
担い手
中間管理機構を活用した担い手への農地集積
●事業を契機として,担い手への農地集積が大幅に進展した。
●担い手 実施前1人→実施後10人
●機構活用面積(率) ※H29時点 実施前0.4ha→現在23.4ha(81.3%)
高収益作物の作付による収益額の増加
●事業を契機とし担い手へ農地集積を進め,より大規模な営農が可能になった結果,馬鈴薯,甘藷など以前から作付が行われていた作物は作付面積が増加した。
●事業により用水を整備した結果,既存の作物だけでなく,ニラなどの新たな高収益作物の作付が可能になった。
工夫のポイント
●生産基盤の整備により,営農効率の向上と高収益作物の導入
●6次産業化及び作物のブランド化
●農地中間管理機構を活用した担い手への農地集積
●位置 :茨城県小美玉市 ●主要作物:里芋 ニラ 馬鈴薯 甘藷 ニンジン 飼料作物 ●地区面積:33.4ha ●主な支援施策:国営土地改良事業石岡台地地区(S43~H1) 県営かんがい排水事業(H7~)
借宿生子地区
畑かん整備による多品目高収益作物の周年作付体系の確立
整備前
排水不良のほ場
不整形で狭小なほ場
小区画で不整形なほ場,狭小な道路,排水路の未整備などにより,耕作に支障を来していた。また,排水不良による湿害に悩まされ不安定な営農を余儀なくされていた。
基盤整備
畑地かんがい施設の導入や区画整理による 計画的かつ効率的な生産体制の確立
大型機械を用いた防除
かん水チューブによる畑かん
●区画整理や畑地かんがい施設の整備により,大型機械の導入や必要時期のかん水が可能となるとともに,排水不良が解消されたことにより,作 業効率が大幅に向上し,計画的かつ安定した生産が可能となった。
生産現場
畑地かんがいを活かした高収益作物の導入
●露地・施設野菜の複合経営により,多品目の高収益作物を新たに導入し,周年作付体系を確立。
加工・流通
JAへの集出荷拡大による収益の向上
●生産量の増加に伴い,販売力のあるJAへの系統出荷量が拡大し,安定した収益の確保につながっている。
担い手
畑地かんがい営農の継承による周辺への波及
●畑かんマイスターによる現地研修会等による畑地かんがい技術の普及活動を通じて,地域のみならず広域にわたっての営農の手本として農業振興に寄与。
多品目の高収益作物導入による露地・施設野菜の周年作付体系を確立
【作付面積と粗収益との変化】
【出典:借宿生子地区の営農実態調査及び現地聞き取り】
●畑地かんがい施設の整備に伴い,露地・施設野菜の多品目高収益作物を導入することにより,周年作付け体系を確立し,1年を通じた収入を確保。
工夫のポイント
●露地・施設野菜の複合経営により多品目周年作付体系を確立
●JAへの集出荷拡大により安定した収益を確保
●畑地かんがい効果の積極的なPRを行うモデル地区として周辺への波及に寄与
●位置:茨城県坂東市 ●地区面積 100ha ●主要作物:ネギ レタス はくさい キャベツ ●主な支援施策 国営霞ヶ浦用水土地改良事業(S55~H20) 県営かんがい排水事業 霞ヶ浦用水Ⅲ期地区(H5~H35)